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金曜相続劇場 第1章 青山華子さんのケース 「几帳面な夫が残したもの」

第2話 3つの選択肢

前回のあらすじ:夫の四十九日が明けた頃、貸金庫の存在に気づいた華子さん。中身を確認しようと銀行へ行くと「相続手続きが完了するまで開けられない」と言われ途方に暮れた。登記簿の住所も古いままだったことが判明。稲場さんの紹介で税理士に相談した美咲が、二次相続の試算表を持ってきた。

「お母さん、ちゃんと向き合わないといけないと思って」

美咲が持ってきた試算表には、はっきりと数字が並んでいた。試算によると、総資産1億8,000万円に対して使える基礎控除は4,200万円しかない。あくまで概算だが、課税対象は1億3,800万円にもなる可能性があるという。

「これ、放っておいたらどうなるの」

「相続税がかなりかかる。だからお母さんが元気なうちに、マンションをどうするか決めておかないといけないって稲場さんに言われたの」

数日後、健一も横浜から出てきて3人で話し合いの場を持った。稲場さんから提示された選択肢は3つだった。

選択肢
選択肢

選択肢① 今のまま住み続ける。万が一のために遺言で「売って現金で分ける」と決めておく

華子さんが亡くなったあとにマンションを売却して、美咲と健一で現金を分ける。今すぐ動かなくていい。でも遺言がないと揉める可能性がある。

「それが一番お母さんの負担が少ないんじゃないかな」

健一が言った。美咲は少し考えてからうなずいた。でも、それだけでは決まらない問題があった。不動産の価値はこれからどうなるかわからない。現金だって減っていく。そして美咲が5年間介護してきた貢献は、どう反映されるのか。


選択肢② 今のまま住み続ける。遺言で「誰に何を渡すか」決めておく

マンションは美咲へ、現金は健一へ。あるいはその逆。誰が何を引き継ぐかを今のうちに決めておく。

「マンションをどちらかが引き継ぐなら、もう一人に代償金を払うことになるよね」

美咲が言った。

「でもお互いが納得して合意できれば、法定相続分にこだわる必要はないんだって。大事なのは全員が納得できる分け方を今のうちに決めておくことだって稲場さんが言ってた」

「まあ、仲良く決めればいいってことか」

健一がのんびりと言った。美咲はため息をついた。


選択肢③ 元気なうちに自分の意思で売って、次の暮らしを自分で選ぶ

売却して施設などへ移る選択肢もある。でも夫を亡くしてまだ日が浅い。仏壇もある。30年来の近所付き合いも。住み慣れたこの家を離れることなど、今の華子さんにはまだ決断できなかった。

「今すぐじゃなくていい。でも選択肢として持っておいてほしいの」

美咲が静かに言った。

「お父さんならどうしたかな」

話し合いは3時間続いた。でも結論は出なかった。

健一は「売るのが一番合理的」、美咲は「お母さんが住んできた家を簡単に売れない」と平行線のままだった。

「お父さんならどうしたかな」

華子さんがぽつりと言うと、2人とも黙った。几帳面で慎重だった夫なら、こういう場面でどんな判断をしただろう。でももう聞けない。だからこそ、自分たちで決めなければならなかった。

「稲場さんにもう一度相談してみよう」

美咲がそう言った。健一も今度は黙ってうなずいた。

華子さんが幸せに暮らせること。それが何より大事だった。そのために今できることを、一つずつ整理していく必要があった。

つづく〜

次回第3話では、再び稲場さんのもとを訪れた美咲が、実は一番の問題は「仏壇とお墓の行方が決まっていないこと」だと気づきます。モノの整理がつかないと、不動産の話も前に進まない。華子さんの「気持ちの整理」が始まります。



てるみんからひとこと

このようなケースは、実際の相談現場でもよく見かけます。

まず大前提としてお伝えしたいのは、華子さんが安心して幸せに暮らせることが最優先だということです。その上で、子供たちが揉めないために今のうちに決めておくことが大切です。

ここで知っておいてほしい大切な考え方があります。

民法第906条(遺産の分割の基準)

「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」

会社で社長と平社員の給与が違うように、家族それぞれの貢献や状況によって受け取る金額が違っていいんです。美咲さんが5年間介護してきた貢献も、遺言できちんと反映することができます。法定相続はあくまで揉めたときの最終ルールでしかありません。

また「どちらかが引き継ぐなら代償金をどう準備するか」という問題には、生命保険金が機能することがあります。死亡保険金は受取人固有の財産なので、遺産分割の対象にならずすぐに使えるお金になります。

保険の活用や資金計画については信頼できる専門家をご紹介できます。税務面も含めて、港区エリアの専門家ネットワークと連携しながら一緒に考えます。一人で抱え込まないでください。

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